インクジェット印刷によるプリントの表現アパレル編

ファッションを語るうえで切り離すことのできない切り口の一つにプリントの企画があります。おそらくその分野に於いては誰しもが通る道であり、また多くの利益を産む企画サイドの武器の一つとも言えるディテールであります。近年印刷技術の進歩によりプリントアイテムも随分と多様化し、あらゆるジャンルで毎シーズン見ることができます。トレンド性に左右される部分はさておき、今回はプリントと作家の関係性について考えてみたいと思うのですが、従来は企画サイドのデザイナーが発想し具体化した企画の象徴であったため、デザイナーの意思を反映した内容のプリントと印刷手法の選択が優先されていたと思います。

しかしコスト面重視の海外生産に比重を置く企業の目覚ましい躍進により、スピードと効率が重要視され始め職人気質なデザイナーは活躍の場を確保することが困難になってきており、またコンピューターによる情報収集の容易さも手伝いそれほど能力の高い創作力を必要としなくとも手頃に安易な企画が可能になりました。前述のデザイナーにとっては何一つ魅力のない企画であっても、その凡庸な企業デザインは多くの利益を産みもてはやされる時代が今だ続いているようです。キャリアや感性に欠ける企画スタッフでさえ、玄人並みに印刷を活用することが出来る時代と言ってもいいかもしれません。一つにインクジェット印刷の浸透。これは衣料のみならずあらゆる印刷物で見ることができ、コスト面で熟考が必要なアパレル業界よりもむしろ幅広く普及しています。しかしこのインクジェット印刷に関してこそ実は感性の優れたデザイナーが活用してこそ、本来の機能以上のヴィジュアルを産み出す可能性を秘めているのではと感じています。

クリエーションの質の高さと営業上の利潤を同時にこなすことの難しさはデザイナーのみならず、多くの企業組織の悩みであり、この分野の永遠のテーマともいえるかもしれませんが理由の一つに再現性の無い物を売ることの効率の悪さがあるように思えます。近年のファストファッションの台頭により、一点ものの魅力よりも同一アイテムの量産が最優先されている現実を見ますと明らかに企画内容に制限や基準があるようです。おそらくほとんどの場合はコスト制限内での安易な企画であり、手間暇のかからないもの。いや少し待ってください。冷静に考えてみますとインクジェット印刷であれば、一点ものの風合いまたテイストを取り入れながら再現性をも持たすことが可能ではないですか。わかりやすく言うならばたまたま上手く描けてしまった絵を改めて描くことが可能なのです。もちろんデータが保存されていればということが条件ですが、それが無い場合もスキャンなりで再現または加工することが簡単に出来てしまう世の中になりました。そう考えるとまだまだ未来のクリエイターには可能性があるように思うのですが、後はそれぞれの発想力に磨きをかけることに期待したいものです。

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